治療院とは?成功する経営のためのガイド

治療院とは?成功する経営のためのガイド

治療院経営には、しっかりした計画と管理が必要です。多様な施術法や専門家の知識、保険適用の範囲を理解し、効果的な経営戦略を立てることが求められます。

 

本記事では、治療院の種類とその特徴、施術法や適応症状、保険の取り扱いについて詳しく解説します。

 

さらに、成功事例と失敗事例を通じて実践的な経営ノウハウを提供し、安定した治療院経営を目指すための具体的なコツを紹介します。


この記事を通じて、経営者としての戦略を見直し、持続的な成長を実現するためのヒントを得ていただければ幸いです。

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この記事を書いた人
日本治療院支援協会編集部

当記事は、「一般社団法人日本治療院支援協会」の編集部が執筆をしています。これまで、セミナーやサービスを通じて3,000院以上の治療院を支援してきました。公式ブログでは、治療院の経営者向けに「治療院経営を成功させることができる秘訣」をお伝えします。

治療院の種類とその特徴

治療院には様々な種類があり、それぞれが独自の施術方法や特徴を持っています。

 

鍼灸院、指圧治療院、マッサージ院は、身体の痛みやストレスを和らげるための施術を提供し、整体院やカイロプラクティックは骨格の調整や姿勢の改善に重点を置いています。

 

接骨院・整骨院は、急性の外傷やリハビリテーションに対応し、整形外科は医療機関としての高度な治療を提供します。

 

これらの特徴を理解し、適切に活用することで、経営者としての戦略を立てやすくなります。以下に、それぞれ詳細を一覧にしたので参考にしてください。

施術法・適応症状・保険適用範囲

この表は、各治療院の施術法、適応症状、および保険適用範囲を一覧にしています。

例えば、鍼灸院では鍼や灸を用いた施術が行われ、腰痛や肩こり、神経痛などが適応症状として挙げられます。また、一部保険適用が可能です。

一方、指圧治療院やマッサージでは保険適用がなく、リラクゼーションや筋肉の緊張緩和が主な目的となります。

接骨院や整骨院は急性外傷に対応し、保険適用が可能です。整形外科は広範な治療を提供し、保険適用範囲が広いのが特徴です。

専門家の資格・主な治療目的

この表は、各治療院の専門家資格と主な治療目的を一覧にしています。

例えば、鍼灸院では鍼灸師が痛みの軽減や体調改善を目的に施術を行います。

整体院では整体師が骨格矯正や姿勢改善を目指し、カイロプラクティックではカイロプラクターが脊椎矯正や神経機能の改善に努めます。

接骨院や整骨院では柔道整復師が急性外傷の治療を行い、整形外科では整形外科医や理学療法士が手術や慢性疾患の管理を行います。

施術時間・費用の目安

この表は、各治療院の施術時間と費用の目安を示しています。

鍼灸院や整体院、カイロプラクティックの施術時間は30〜60分程度で、費用は3,000〜7,000円が目安です。

 

指圧治療院やマッサージの施術時間は30〜90分と幅広く、費用も2,000〜10,000円と多様です。接骨院や整骨院は15〜30分程度の施術で、保険適用であれば比較的安価です。

 

整形外科は診療内容により治療時間や費用が異なりますが、基本的に保険適用となります。

治療院(鍼灸院・指圧治療院・マッサージなど)

治療院には鍼灸院、指圧治療院、マッサージなどが含まれます。

 

鍼灸院では、鍼や灸を用いて身体のツボを刺激することで血行を促進し、痛みや不調の改善を目指します。

 

指圧治療院は指圧によるマッサージを行い、筋肉の緊張を和らげる効果があります。

 

マッサージは、手や指を使って体の表面を揉む、さする、叩くなどの手技を用いて血流を改善し、リラクゼーション効果を提供します。

 

これらの治療法は主に医療類似行為として位置づけられ、健康保険の適用は限定的です。

治療院で働く職種

治療院で働く職種には、鍼灸師、指圧師、マッサージ師が含まれます。

鍼灸師

鍼灸師になるためには、文部科学省または厚生労働省が認定する専門学校や大学の鍼灸科において、3年間の教育を受けることが一般的です。卒業後、国家試験に合格する必要があります。

指圧師・マッサージ師

あん摩マッサージ指圧師の資格を取得するためには、厚生労働省が認定する専門学校や大学のあん摩マッサージ指圧科において、3年間の教育を受けることが必要です。卒業後、国家試験に合格する必要があります。

整体院・カイロプラクティックなど

整体院とカイロプラクティックは、手技を用いて体の不調の改善を目指します。

 

整体は、東洋医学の理論に基づいており、筋肉や関節など体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目指します。

 

カイロプラクティックは、西洋医学の解剖学や生理学の理論に基づいており、主に脊椎や関節の調整を行い、体の自然治癒力を引き出すことを目指します。

 

これらの手技は医療行為ではなく、医業類似行為として位置づけられ、健康保険の適用はありませんが、多くの患者さんに支持されています。

整体院・カイロプラクティックで働く職種

整体院では整体師、カイロプラクティックではカイロプラクターが施術を行います。これらの職種は、患者さんの健康を手技によってサポートし、身体全体のバランスを整えることを目的としています。

整体師

整体師の資格は民間資格であり、整体師養成スクールや講座に通うことで取得できます。一般的には、数ヶ月から1年程度の期間で取得可能です。

カイロプラクター

海外では国家資格となっている国もありますが、日本でのカイロプラクティックは民間療法です。教育は主に民間の教育機関や大学で提供されています。プログラムの期間は1年から3年程度であり、アメリカのカイロプラクティック大学での標準的な修業年限は3年です。

接骨院、整骨院

接骨院・整骨院では、骨折、捻挫、脱臼などの外傷に対する施術が行われます。

 

柔道整復師が非観血的療法を用いて、骨や関節の損傷を治癒に導く施術を行います。これらの施術は健康保険が適用されるため、患者さんは比較的安価に施術を受けることができます。

 

整骨院・接骨院では医療行為はできませんが、骨や関節の損傷や外傷に対する治療には特化しています。

接骨院、整骨院で働く職種

接骨院・整骨院では、柔道整復師が主に施術を担当します。

柔道整復師

柔道整復師の資格を取得するためには、厚生労働省が認定する専門学校や大学の柔道整復科において、3年間の教育を受けることが必要です。卒業後、国家試験に合格する必要があります。

整形外科

整形外科は、骨や関節、筋肉、神経などの運動器系の障害を診断し治療する医療機関です。外科的手術やリハビリテーション、薬物療法など幅広い治療法を提供します。

 

整形外科では、骨折や関節炎、スポーツ障害などの急性および慢性の疾患に対して専門的な治療を行うため、広く健康保険が適用されます。

整形外科で働く職種

整形外科では、整形外科医を中心に、理学療法士や作業療法士などがチームを組んで治療にあたります。整形外科医は手術や診断を行い、理学療法士や作業療法士はリハビリテーションを担当します。これらの専門職が連携して、包括的な治療を提供します。

整形外科医

日本整形外科学会の整形外科専門医になるためには、まず医学部で6年間の教育を受け、医師国家試験に合格します。その後2年間の臨床研修を経て、整形外科専門研修を満4年間修了する必要があります。最短でも医学部入学から12年の学びと研修が必要です。

理学療法士

理学療法士の資格を取得するためには、厚生労働省が認定する専門学校や大学の理学療法科において、3年から4年間の教育を受けることが一般的です。卒業後、国家試験に合格する必要があります。

作業療法士

作業療法士の資格を取得するためには、厚生労働省が認定する専門学校や大学の作業療法科において、3年から4年間の教育を受けることが一般的です。卒業後、国家試験に合格する必要があります。

健康保険の取り扱い

健康保険でマッサージはできない

整骨院や接骨院では「健康保険が使えます」といった表示が見受けられますが、実際には健康保険が使える施術と使えない施術があります。ここではその違いについて説明します。

 

整骨院や接骨院で健康保険が使えるのは、はっきりした原因があるケガや痛みに対する施術のみです。

 

日常生活やスポーツ中の事故による捻挫や骨折、脱臼、打撲などが該当します。ただし、骨折と脱臼については、応急処置を除き、医師の同意が必要です。

 

逆に、肩こりや筋肉疲労、体調不良といった日常的な不快感や、病気(神経痛、リウマチ、五十肩など)による慢性的な痛みには健康保険は使えません。

 

また、過去の交通事故による後遺症や、通勤中や仕事中のケガも健康保険の対象外で、これらの場合は労災保険が適用されます。

 

鍼灸院での施術も健康保険の適用には制限があります。対象となるのは、神経痛、リウマチ、五十肩、頚腕症候群、腰痛症、頸椎捻挫後遺症の6つの疾患に限られ、医師の治療が効果を示さない場合に限り、医師の同意を得て初めて保険適用となります。

 

あん摩マッサージ指圧師による医療マッサージについても、医師が必要と認めた場合に限り、関節可動域の拡大や筋力増強を目的とした施術に対して健康保険が適用されます。初回申請時に医師の同意書が必要であり、継続には3カ月ごとに医師の同意が求められます。

 

整骨院や接骨院で行われるリラクゼーション目的のマッサージには、健康保険は使えないことを明示しましょう。

 

適切な資格を持つ施術者が行う治療目的の施術のみが保険の対象であることを、患者さんに明確に伝えることが大切です。

健康保険を使った受領委任制度

受任医療制度を取り扱うには、予め自院の所在する都道府県を管轄する事務所へ申出書の提出が必要です。申出書等については、管轄する地方厚生(支)局のウェブページをご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/jyuudou/oshirase.html

 

以下は自院での利用方法と手続きについての説明です。受領委任制度を活用することで、患者さんは施術時に自己負担分のみを支払い、残りの費用は施術所が直接保険者に請求します。

 

利用方法と手続き

1.受領委任契約の締結

必要書類:契約を行うために必要な書類(受領委任契約書、申請書など)を準備します。

契約手続き:保険者(健康保険組合や国民健康保険など)と受領委任契約を締結します。これにより、施術所は制度を利用できるようになります。

 

2.患者さんの初回申請手続き

医師の同意書:はり・きゅうやあん摩マッサージ指圧の施術では、患者さんが初回に医師の同意書を取得する必要があります。

確認と提出:患者さんから医師の同意書を受け取り、適用条件を確認します。必要に応じて保険者に提出します。

 

3.施術費の受領と記録

自己負担分の受領:患者さんから自己負担分の施術料を受け取ります。

施術記録の管理:施術内容や受領金額を詳細に記録します。これらの記録は後日の監査に備えて保管が必要です。

 

4.保険請求手続き

請求書の作成:保険請求書を作成し、必要な情報を記入します。

提出:毎月、保険者に対して保険請求書を提出します。通常、月末にまとめて提出することが一般的です。

支払いの確認:保険者からの支払いが確実に行われているか確認します。不備がある場合は、速やかに対応します。

 

5.継続申請の手続き

再同意書の取得:継続して施術を行う場合、3カ月ごとに医師の同意書を再取得します。

手続きの繰り返し:同意書を受け取り、保険請求手続きを繰り返します。

 

6.監査への対応

記録の保管:施術記録や請求書のコピーなど、関連書類を適切に保管します。

監査対応:保険者や行政機関による監査が行われる場合に備えて、準備を整えます。

 

受領委任制度は、患者さんの金銭的な負担が軽減されるとともに、煩雑な手続きも省けます。この制度を正しく利用することで、患者さんにとっても施術所にとっても大きなメリットがあります。

健康保険の注意点

健康保険を利用する際には、以下の点に注意することが重要です。

 

1.正確な記録

施術内容や請求額を正確に記録することが重要です。不正請求や記録の不備は厳格に管理されます。

 

2.適用条件の確認

健康保険が適用される施術かどうか、初めにしっかりと確認します。

 

3.患者さんへの説明

患者さんに対して受領委任制度の仕組みや自己負担額について明確に説明し、理解を得ることが大切です。


これらを守ることで、治療院は信頼を得て患者さんに安心して施術を受けてもらえます。また、適切な運用と法令順守により経営の安定化と社会的信用の向上も図れます。しっかり対応しましょう。

治療院経営を成功させるためのコツ

治療院を成功させるためには、戦略的な経営が不可欠です。ここでは、経営戦略から顧客満足度、スタッフの育成、財務管理まで、成功への鍵となるポイントを解説します。

経営戦略の重要性

経営戦略は、目標達成のための方向性を示し、効果的な行動計画を立てるための基盤となります。


競争が激化している現在の治療院業界では、経営を安定させるために効果的な戦略が必須です。多くの治療院が直面する主な問題は、市場理解不足とターゲット設定の失敗にあります。

市場調査とターゲティング

市場調査を行い、自院の強みや地域のニーズを把握しましょう。ターゲットとなる顧客層を明確にし、そのニーズに応じたサービスを提供することで、競争力を高めることができます。

 

例えば、地域の人口構成や健康に関する関心事を調査することで、どのようなサービスが求められているのかを知ることができます。

 

また、競合他院のサービス内容や価格設定を分析することで、自院の優位性を見つけ出すことができます。

 

次に、ターゲティングによって、どの顧客層に焦点を当てるかを明確にすることが重要です。年齢層や性別、生活スタイル、健康状態などのデータを基に、最も適した顧客層を特定します。

 

さらに、ターゲットとなる顧客層のニーズに応じたサービスを提供することで、顧客満足度を高めることができます。

 

例えば、スポーツ愛好者向けのリハビリプログラムや、高齢者向けの運動指導など、ニーズに合わせた具体的なサービスを展開しましょう。

効果的な広告と宣伝

適切な広告と宣伝活動を通じて、自院を広く知ってもらうことから始めましょう。

 

市場調査で得た情報から、年齢層や性別に合った戦略を立てることも重要です。例えば、高齢者向けには地域密着型の広告が効果的ですし、若年層にはSNSを活用したデジタルマーケティングが有効です。

 

ターゲット層のニーズに応じたアプローチを計画することで、より綿密な戦略を立てることができます。

 

このようにして、必要とする患者さんに自院の情報を届けることができれば、経営の安定化に繋がります。しっかりとした戦略を持ち、計画的に広告と宣伝を行うことが成功への鍵です。

顧客満足度の向上

顧客満足度が向上すると、それが直接的に自院の成長に繋がります。患者さんの声を積極的に取り入れ、常にサービスの質を改善していく姿勢が求められます。

顧客ニーズの把握とサービス改善

患者さんのニーズを正確に把握し、それに応じたサービス改善を行うことが重要です。アンケートやフィードバックを活用し、患者さんの声を反映させることで、顧客満足度を高めることができます。

 

例えば、施術後に実施するアンケート調査を通じて、サービスの質やスタッフの対応、待ち時間などについての意見を収集します。その結果を分析すれば、具体的な改善策を立てることができるでしょう。

 

一例として、患者さんから「待ち時間が長い」との意見が多く寄せられた場合、予約時間枠の見直し、待ち時間を有効に活用できるようなストレッチマシンの設置などを検討します。

 

フィードバックを受けて、技術向上のための研修を定期的に行うことも有効です。

 

さらに、顧客ニーズに基づいた新しいサービスの導入も考慮しましょう。例えば、働く世代向けのストレス緩和メニューなど、自院のニーズに応じたサービスを提供することで、顧客層の拡大が期待できます。

 

オンライン相談や予約システムを導入することで、利便性を高めることも顧客満足度の向上に繋がります。

 

実際に改善策を実施した後も、その効果を測定し、継続的に改善を行うことが重要です。新しい予約システムを導入した後は再度アンケートを実施し、患者さんの反応を確認します。


このようにして、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を繰り返すことで、常にサービスの質を高め続けることができます。

パーソナライズされた体験の提供

患者さん一人ひとりに寄り添った対応を心がけましょう。パーソナライズされた体験の向上は、リピーターの増加に大きく貢献します。

 

業界を問わず多くの調査結果からも、パーソナライズされた顧客体験を提供する企業やサービスに対して、顧客が高い信頼感を示すことが明らかにされています。

 

これらの調査によると、顧客体験を向上させるためには、オンラインとオフラインをつなげた体験が求められています。また、日本の消費者はこれまで価格重視の傾向がありましたが、必ずしも価格だけが満足度に繋がるわけではありません。

 

個人として気にかけてもらえていると感じた体験に対して、強い信頼感を持つことが示されています。


このような結果からもわかるように、「自分に向けられた、より良い体験」を得た顧客は、企業やサービスへの信頼が高くなると言えます。

スタッフの育成と管理

優れたスタッフは治療院の財産です。スタッフの育成と管理に力を入れることで、質の高いサービスを提供し続けることができます。

研修と教育の重要性

定期的な研修と教育を通じて、スタッフのスキルアップを図りましょう。新しい治療技術やサービス向上のための知識を学ぶ機会を設けることが重要です。

 

まず、定期的にトレーニングやセミナーを実施し、新しい技術や施術法を学ぶ機会を提供します。例えば、ある鍼灸院では月に一度、外部講師を招いた勉強会を開き、スタッフのスキルアップを図っています。

 

また、スタッフのモチベーションを維持するために、定期的な評価面談を行い、個々の業績や成長を確認することも重要です。適切なフィードバックやインセンティブ制度を設けることで、スタッフのやる気を向上させることができます。

 

評価基準を明確にし、達成度に応じた報酬を与える取り組みも有効です。これにより、スタッフは自分の成長を実感し、仕事に対する満足度が高まります。

 

研修プログラムは、段階的に計画することが大切です。

 

研修は単発ではなく、継続的に行うことで、スタッフのスキルや知識を持続的に向上させることができます。例えば、新入社員向けの基礎研修から始まり、経験を積んだスタッフには専門的なトレーニングを提供することで、各階層に応じた成長の機会を与えます。

 

研修と教育は、治療院全体の発展にも寄与します。スタッフが高いスキルを持ち続けることで、治療院のサービス品質も向上し、患者さんの満足度も高まります。これにより、治療院の評判が良くなれば、新規患者さんの増加にもつながるでしょう。

 

このように、計画的で継続的な研修と教育を通じて、スタッフの成長を支援し、治療院全体の発展を目指しましょう。

 

具体的な取り組みを行うことで、優れた人材を育成し、治療院の成功につなげていくことができます。

労働環境の整備

働きやすい環境を整えることで、スタッフのモチベーションとパフォーマンスを向上させることができます。適切な労働時間の管理や福利厚生の充実を心がけましょう。

 

以下では、治療院の規模に応じた労働環境整備の具体的な方策について紹介します。

 

<1~2院経営の場合>

1.労災・雇用保険加入

労災保険と雇用保険の加入を徹底しましょう。労災保険に未加入の院は多いですが、スタッフの安全と安心のために必須です。

 

2.雇用契約書の整備

口頭での雇用契約を避け、雇用契約書(労働条件通知書)を整備しましょう。これにより、スタッフとのトラブルを防ぎ、信頼関係を築くことができます。

 

<3~10院経営の場合>

1.就業規則の作成

事業の発展を目指すため、就業規則の作成に着手しましょう。パートタイマー規程も含めると尚良いです。これにより、全スタッフが一貫したルールの下で働くことができます。

 

2.人事評価制度の構築

新規患者数やベッド回転率、リピート率などの評価基準を設定し、人事評価制度を構築しましょう。具体的な数値を基準にすることで、スタッフが何を評価されているのかをはっきりと知ることができ、スタッフのパフォーマンス向上を促します。

 

3.社会保険加入

法人化に伴い、社会保険に加入することを検討しましょう。スタッフに対する社会保険セミナーを行い、産前・産後休暇や厚生年金などの福利厚生を提供することで安心感を与え、スタッフの定着率を向上させます。

 

<10院以上経営の場合>

1.退職金制度の整備

中小企業退職金共済制度や確定拠出年金の導入を検討し、退職金制度を整備しましょう。これにより、長期的なスタッフの定着を図ることができます。

 

2.給与計算業務の効率化

経理担当者の負担を軽減するため、給与計算業務の効率化を図りましょう。外部への委託を検討したり、経理担当者の業務上の悩みを日頃から聞き、サポートをする体制の構築が必要です。


このように、治療院の規模に応じた具体的な対策を講じることで、スタッフの働きやすさとパフォーマンスを向上させ、治療院全体の発展を目指しましょう。

財務管理の基礎

健全な財務管理は治療院の持続的な成長に不可欠です。収益を最大化し、コストを適切に管理するための知識とスキルが求められます。

 

まず、治療院の経営において重要な指標となるのは営業利益率です。

 

営業利益率 = 売上 ー 経費

 

営業利益率とは、売上から経費を引いた利益の割合を示すもので、家賃、人件費、水道光熱費、広告費、消耗品費などが含まれます。年間売上5,000万円未満の治療院では、平均営業利益率が4~5%であれば黒字経営が維持できるとされています。

 

これは、治療院における目標営業利益率の10~15%には届かないものの、適切な経費管理と収益の最大化により、持続的な成長が可能となります。

 

また、人件費は労働分配率という指標で評価され、業界平均の40%前後を基準に適正な管理が求められます。

 

労働分配率 = 人件費 ÷ 売上

 

これにより、スタッフの定着率を高め、治療院全体のパフォーマンス向上に繋がります。

コスト管理と収益最大化

コスト管理を徹底し、無駄な支出を削減することで、収益を最大化することができます。

 

まず、経費の管理には、家賃、人件費、水道光熱費、広告費、消耗品費などの各項目を細かく見直すことが重要です。

 

例えば、地代家賃は売上の10%前後が適正とされ、月商500万円の場合は50万円が基準です。

 

また、広告費に関しては、月商の3~5%を目安に投資することが推奨されています。広告費を適切に投資することで、地域での認知度を高め、新規患者さんの獲得に繋がります。

 

さらに、労働分配率を適正に保つことで、人件費の無駄を削減し、スタッフのモチベーションを維持しながら効率的な運営を実現します。


具体的には、労働分配率を30~35%に抑えつつ、一人当たりの生産性を向上させることで、給与を下げずにスタッフのやりがいを高めることが可能です。

資金調達と投資計画

治療院の成長には、適切な資金調達と投資計画が必要です。金融機関との連携や補助金の活用を検討しましょう。

 

日本政策金融公庫や地方自治体からの融資は、長期的かつ低金利での資金調達が可能であり、事業の安定的な成長を支える重要な手段です。

 

例えば、日本政策金融公庫の融資は、連帯保証人や担保が不要な場合もあり、自己資金が不足している場合でも資金調達が容易です。

参照:日本制作金融公庫

また、補助金や助成金の活用も効果的です。「小規模事業者持続化補助金」などは、最大250万円が補助され、店舗運営に関する幅広い用途に使用できます。

参照:全国商工会連合会

 

さらに、長期的な視点で投資計画を立てることで、治療院の設備更新や新たな治療法の導入など、競争力を維持・強化するための基盤を構築することができます。

 

資金調達後は、返済プランをしっかりと立て、経営の安定を図りましょう。

成功事例と失敗事例

成功事例と失敗事例の分析は非常に重要です。それぞれの事例から成功のアイデアや、失敗を繰り返さないための教訓を学びましょう。

成功事例の紹介

成功事例を通じて、他の治療院がどのような工夫や戦略を採用して成功を収めたのかをご紹介します。


具体的な事例を学ぶことで、自身の経営に役立つヒントを得られるでしょう。以下に、都市型鍼灸院と地域密着型整体院の2つの成功事例を紹介します。

成功事例1: 都市型鍼灸院のケース

場所: 東京都内のビジネス街

開業: 2010年

ターゲット層: ビジネスマン、オフィスワーカー

 

戦略

1.立地の選定

・駅近くのオフィス街に立地し視認性を高める看板などを設置。

 

2.通える仕組みの導入

鍼灸に加え、短時間で効果が感じられる指圧マッサージや、リラクゼーションメニューを導入。

 

3.オンライン予約システムの導入

・忙しいビジネスマン向けに、24時間予約可能なオンラインシステムを導入。

 

成果

1.売上の増加

開業から3年で売上が2倍に増加。

 

2.顧客のリピート率

・リピート率が70%以上を達成。

 

3.口コミ評価

インターネット上の口コミ評価が高く、新規顧客の増加に寄与。

成功事例2: 地域密着型整体院のケース

場所: 大阪郊外の住宅地

開業: 2015年

ターゲット層: 高齢者、主婦、スポーツ愛好者

 

戦略

1.地域イベントの活用

・地域の健康イベントに参加し無料体験会を実施。地域住民との信頼関係を築く。

 

2.パーソナライズされたサービス

・患者さん一人ひとりに合わせた施術計画を提供し、信頼を獲得。

 

3.高齢者向けサービスの充実

高齢者向けの送迎サービスを提供し、通院のハードルを下げる。

 

成果

1.地域での評判の向上

・地域の口コミや紹介で新規患者の増加。

 

2.顧客満足度

アンケート調査で90%以上の顧客が満足と回答。

 

3.経営の安定化

・開業から5年で安定した収益を確保し、新たな分院の開設に成功。

失敗事例から学ぶ

失敗事例を学ぶことは、成功への第一歩です。過去の失敗から得られる教訓は、新たな戦略を立てる際に非常に有益です。


ここでは、過剰投資による資金難と顧客ニーズの無視が招いた2つの失敗事例を紹介し、それぞれの問題点とその結果について詳述します。

失敗事例1: 過剰投資による資金難

場所: 都内の商業地

開業: 2018年

ターゲット層: 富裕層、観光客

 

問題点

1.過剰な設備投資

・高級な内装や最新の治療機器に多額の資金を投入。

2.高額な広告費用

広告費用に多額を投じたが、ターゲット層へのリーチが不十分。

3.経営計画の不足

・初期費用の回収見込みが甘く、運転資金が不足。

 

結果

1.資金繰りの悪化

・開業後半年で資金が枯渇し、追加の借り入れを余儀なくされる。

2.顧客獲得の失敗

・高額な施術料金がネックとなり、リピート率が低下。

3.最終的な閉院

開業から1年半で閉院を決定。

失敗事例2: 顧客ニーズの無視

場所: 地方都市の中心地

開業: 2017年

ターゲット層: 若年層、オフィスワーカー

 

問題点

1.顧客ニーズの無視

・若年層向けのカジュアルな雰囲気を重視しすぎ、地域のニーズと合わなかった。

2.スタッフ教育の不足

スタッフのスキルや接客態度が一貫せず、顧客満足度が低下。

3.競合分析の欠如

・周辺の競合店との差別化が不十分で、競争に敗れる。

 

結果

1.顧客離れの進行

開業当初は話題性で集客できたが、サービスの質が伴わずリピート率が低下。

2.売上の低迷

・開業から半年後に売上が急激に減少。

3.再建の失敗

複数の改善策を試みたが、経営改善ができず、開業から2年で閉院。

まとめ

回の記事では、治療院の種類や特徴、適用される保険、経営のコツ、成功事例と失敗事例などについてご紹介してきました。

 

治療院の成功には、多様な施術法や専門家の知識、健康保険の適用範囲などの知識や理解が不可欠です。

 

鍼灸院やマッサージ院、整体院、整骨院、整形外科など、それぞれの治療院は独自の特徴と役割を持っています。適切な財務管理とコスト管理、効果的な広告戦略、スタッフの育成と管理を通じて、持続的な成長を目指すことが重要です。

 

また、成功事例や失敗事例から学ぶことで、実践的な経営ノウハウを得ることができます。

 

治療院の種類ごとの特徴や運営のコツを理解し、効果的な経営戦略を立てることで、地域社会に貢献しつつ、安定した治療院経営を目指しましょう。

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日本治療院支援協会編集部

当記事は、「一般社団法人日本治療院支援協会」の編集部が執筆をしています。これまで、セミナーやサービスを通じて3,000院以上の治療院を支援してきました。公式ブログでは、治療院の経営者向けに「治療院経営を成功させることができる秘訣」をお伝えします。